Record club of Americaって何?

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Record Club of Americaって何?

ある時手に入れたピンク盤のジャケットにシールが貼ってありました。そこには Record Club of America の文字が。これって一体何だろう? と言う話です。

ジャケットの背面にこのようなシールが貼ってあったんです。

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PRのRCAシールatco2.jpg▲PRプレスで住所表記がAtcoのピンク盤に貼られていたシール

PRのRCAシールatlantic4.jpg▲PRプレスで住所表記がAtlanticのピンク盤に貼られていたシール

 シールの形状は違いますが、ほぼ似たようなサイズ(縦2cm×横6cm程度)で、ジャケットの背面の下部に貼られていました。手許にRecord Club of Americaのピンク盤は3セットあり、このシールが貼られているピンク盤は2セットありますが、ひょっとしたら他の形状のものもあるかもしれません。書いてある内容についてですが、拙い訳をいたしますと次のようになります。

「Record Club of America 用にアトランティック・レコードの
ライセンスのもとに生産されています」

 上の写真は、がAtco名義がAtlantic名義ですが、我が家にあるものは全てプレス工場がPRのピンク盤のものでした。これまた他の工場でプレスされたものがあるのかどうかは分かりませんが、オークションで見かけるものもPRプレスばかりの気がしています。

ところで肝心の Record Club of America って何なのでしょう? それが一番大事なことでした。

 とりあえず調べてみました、Record Club of Americaについて。分かったことは60年代後半~70年代中頃まで活発に活動をしていた、ディスカウント通信販売のレコード小売業者ということでした。ペンシルバニア州のヨーク市に拠点を置いており、60年代の終わり頃にはかなり大きく商売を広げていたようです。
 記録によると当時通常4.98ドルの価格がついていたアルバムは、2.99ドル、さらには2.49ドルまたは1.99ドルで売られていたようです。また当時の同業他社と比較しても送料や手数料は非常に安かったみたいです。
 そうか、このClubというのは、今も我々の身近にあるソニークラブとかああいうのと同じ意味なんですね。なるほどなるほど。

 しかしそんな隆盛を誇ったRecord Club of Americaですが、70年代の中盤に近づくと経営内容が悪化していったようです。というのも、同社の低価格路線は当時再販制度の下にあったレコードを、100%買い取りで販売することによって成り立っていたからです。つまり"Manufactured by Record Club of America" というシールがレコードに貼られたということは、Record Club of Americaがそれらをすべて買い取り在庫していたということに他なりません。
 売れなければ在庫の山、70年代中頃には600,000タイトルを抱えていたということです。やがて世の中はデジタルの時代になりウエブサイトを持っていた時代もあったようですが、今は分かりません。そんなわけで、このシールにはこんないきさつが有ったのですね。

レーベルにはこんな表記がありました

PRラベルD-F2.jpgPRのRCAラベルatlantic2.jpg 話をレーベルに戻しましょう。写真左は通常のピンク盤のレーベルですが、Record Club of Americaのレコードでは、写真中央のように少しだけ違いがありました。
 通常盤ではセンター下部の住所表記付近に、レコードの固有番号がプリントされていますが、Record Club of America盤ではその位置にジャケットに貼られたシールと同様の内容がプリントされており、コードの固有番号は中央・右の盤順表記の下に位置していることが分かります。

PRのRCAラベルatco2.jpg せっかくなので何が書いてあるのか、転記してみましょう。とにかく小さな字で老眼の目にはなかなかきついですが、スキャンして拡大すればなんとか読めます。
 
       Manufactured Under License Issued By
        Atlantic Recording Corporation  to
          Record Club of America, Inc. 

 ちなみに恒例のマトリクス調べですが、特にRecord Club of America用の刻印とかそういうものは見つからず、普通のPRプレスのピンク盤と同じでした。ちなみに手持ちのマトリクスを報告しましょう。

  • ・ST-CAP-71222X PR C 
  • ・ST-CAP-71222X PR D 
  • ・ST-CAP-71222X PR E

 どうやらRecord Club of America用に製作されたのは、ジャケットに貼られたシールと、レーベルのみのようです。レーベルというのは元刷りが大量に製作されて、バンド名・タイトル名・曲名などの情報はあとからスミ(黒)版だけ印刷されるので、このような差し替えは簡単にできたのでしょう。
 つまり音源そのものは通常盤と同一で、レーベルだけRecord Club of America用のものが使用されていたと考えられます。音を聴けば分かることですが、当然のごとくまったく通常盤と差がありません。マトリクス通りの音がします。

結論 : ということで、アメリカの商品流通のあり方が垣間見れるディスカウント通販会社 "Record Club of America" でした。